01根管は肉眼ではよく見えない
歯根の中心部に見える黒い筋は、歯の神経などが入っている大切な管で、これは歯科用語では「根管」と呼びます。そして、歯の神経の治療は『根管治療』と呼ばれ、歯の寿命を決める重要な歯科治療の一つです。
根管の状態は、レントゲン写真などで、ある程度確認する事が出来ます。しかし、口腔内における治療を肉眼で行うと、ほとんど見ることはできません。
さらには、レントゲン写真の結果も完全ではありません。
3本だろうと思われていた根管が、実際には4本や5本であったりすることもあるからです。
これらは、最近の歯科用顕微鏡の導入で明らかになってきたことです。
それだけ、人間の歯の根管は複雑でわかりにくく、これまでの肉眼や拡大鏡に頼った診察では、根管は見えていないことを示しています。
02再根管治療を回避するための顕微鏡歯科治療
歯科用顕微鏡は、細かな神経や血管が張り巡る根管内を、肉眼の数十倍に拡大し正確に映し出します。
たとえば、むし歯や外傷などにより、根管内が細菌感染を起こしている場合には、歯髄の一部あるいはすべて取り除き、炎症を起こしてしまった根管内を綺麗に清掃する必要があります。
その時に活躍するのが歯科用顕微鏡です。
これまでは(肉眼による)手探りに近い状態で行われていた根管治療でしたが、歯科用顕微鏡の導入により、直径1mm以下の根管を、確実に目で確認しながら治療することが出来るようになりました。
肉眼での根管治療時には、根管を見落としたり汚染物質が残ってしまう事が頻発します。
これらがそのまま放置されると、治療後数年経過してから痛み出すという問題も生じます。
こうなると、再び根管治療(再根管治療)が必要になってしまいます。日本の歯科治療においては、この再根管治療が非常に多いと言われています。
しかし、歯科用顕微鏡を用いると、このようなトラブルが少なくなります。
この顕微鏡歯科治療の世界が、いかに根管治療の精度を上げたかが実感できることでしょう。
03確実に神経(根管)をとらえて診断するために歯科用顕微鏡を用いる
04根管治療には必須のラバーダム防湿
『ラバーダム防湿』は、日本で行っている歯科医が非常に少ない処置で、全体の10%以下と言われています。
しかし海外では、『ラバーダム防湿』をしないで根管治療を行うことはあり得ないとされるほど必須の処置です。
米国などでは、『ラバーダム防湿』を行わずに根管治療を行った結果、予後が悪ければ訴訟問題にまで発展すると言われています。
それほど、『ラバーダム防湿』は、根管治療時には当たり前の処置なのです。
左の写真は、倍率(3段階)を変えて撮影した『ラバーダム防湿』時の根管治療の様子です。
ラバーダムとは歯に装着するゴムのシートです。このゴムのシートで患部の周囲を覆います。こうすることにより、根管への唾液の流入を防ぎ、唾液に含まれる細菌の侵入が阻止されます。
また、治療時に使用する薬液や細かい治療器具などの誤飲・誤嚥防止にも役立ちます。
つまり、根管治療の安全性を向上させて、飛躍的に成功率を上げるための非常に重要な処置なのです。
これを施さなければ、きれいに消毒することが目標である根管治療時に、逆に根管内に細菌を侵入させ、繰り返し繰り返し炎症を引き起こす事態になりかねないのです。
何度通院しても、根管治療が終わらない。
痛みや炎症が治まらない。
こんな事を防ぎ、根管治療の成功率を上げるために、ラバーダム防湿と歯科用顕微鏡を用いた確実な根管治療は、通院回数や苦痛を軽減する事ができると言えるでしょう。
03動画でみる歯科用顕微鏡下での根管治療
すでに、根管治療が終わった歯でしたが、改めて顕微鏡で観察すると未治療の根管が見つかりました。このように、歯科用顕微鏡を使わずに根管治療を行うと、治療が必要な根管を見落とすこともあります。
こちらの症例は再根管治療を行い、その後、無事に治療が完了しました。
とても細く、小さい根管は歯科用顕微鏡でなければ見つけることすらできません。